2009年 12月 27日

陸奥新報 のれそれカッフェ その3

「隣にある現代の風土」


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 もうすぐ終わるこの1年を振り返ります。10月に盛岡と花巻でグループ展をしました。文化庁地域文化芸術振興プラン「アートスクエアinいわて」の一環で開催された四人展「アートの風」に地元作家と参加しました。
 会場である盛岡の旧石井県令邸は明治19年に完工、昭和52年に盛岡市歴史的建造物指定を受けた建物です。最近では効果的な建築物の活用をめざし美術展の会場としても多く利用され始めています。会場空間は美術展のためだけにあつらえた場所ではないため作家は工夫をします。時には場所の持つ雰囲気が作品にもプラスになる影響を吹き込んだりします。まさにアートという風の通り抜けることで建物も作品も新しい呼吸をしだすものだと感じました。天井の高さや窓の装飾や暖炉の細工も作品以上に魅力的ですが、ここで作品を観ていると存在するということの物語が紡ぎだされます。123年の時層と現代の作品の出逢いがまた和音を奏でます。
 他のアートスクエア展をも通して隣県の美術現場や作品傾向を体験的に味わえたことは非常に参考になりました。地方を立つ場として活動する作家の動向は地域ごと微妙に様相が違います。風土と人間という視点は現代でも重要な切り口であることを感じました。若手作家や美術学生が多く様々に躍動していることや、作家同志がお互いに交流を持ち、世代間でも協力関係が深いという印象を強く持ちました。風土というか気風でしょうか。
 前回ここでも触れた「アート@つちざわ」は花巻での展覧会です。その展示は広範囲に広がりまさに「街の中」のいたるところが美術のために両手を拡げて待ち受けていました。立体作品や絵画が屋内外に置かれている中で私は「おふだプロジェクト」という架空のおふだを街中の商店門口に貼り歩く計画を実行しました。もちろん宗教ではありませんが民間伝承的風味で古くこの地域にあったかのような謎の文字を和紙に木版で刷った札を各戸軒先に貼らせてもらいました。おふだの貼られた街並そのものを作品としたい悪戯な試みでした。小片紙ですが広範に貼り歩きました。そこでの街の人との出会いもうれしい美術的体験でした。
 美術の理念を深く信じ愛する者たちによって生み出され拡がる事を思えば美術もまた一種の布教的活動に通ずるものがありそうです。もちろん美術と信仰は別なものですが崇高性という気配が何か関連してきそうです。
 2つの展覧会が終る頃には風景は青森とはまた違う岩手色の晩秋に深く染まっていました。

陸奥新報「のれそれカッフェ」掲載)
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by aura-21 | 2009-12-27 15:04 | 作品画像


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