AURA版画工房 日誌部 「むげたほげ」

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2010年 02月 14日

陸奥新報 のれそれカッフェ その4

「リアルと質感」


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 残務整理の最中です。残務というとマイナスイメージですが自分にとってはちょっと楽しい初めての挑戦です。
 4ヶ月前に終了したグループ展。事務局からその図録を製作中と連絡をいただき自分から残務を願い出ました。事務局では毎回展覧会終了後に参加作家の作品画像や関係テキストを編集し一冊にまとめた図録を作ります。図録は展覧会の記録集であり報告書です。実際に現場会場でその作品を鑑賞してもらった方がもちろん嬉しいのは当然です。しかし会期が終わり撤収や解体されてしまうと作品という骨格は時に再構成できずに消えてしまいます。現代美術に多いインスタレーションという手法は特に写真や映像での記録が重要になります。制作した作家本人も様々な方法で記録を保存します。ですからこうした図録の編集作業は記録資料としても大切な仕事です。
 さて私の残務というのはこの図録に実際に展示で使った版画を刷り増して添付してもらうことです。発行部数は千部の予定だそうです。部数ぶんだけ摺るので結構な執念が必要です。元々版画も印刷の一種なのですが現代のように印刷技術が高度化し家庭化すると版画のような素朴なテクスチャー(質感)もまた特殊な存在感を発揮するように思います。迷惑にも図録にオマケで版画が付くのは面白いかもしれません。図録に「一枚実物を挿めること」それ自体を作品とするのも実のところ密かな狙いです。私にとり同じ版をこれだけ摺るのも初体験です。
 最近ではホームページやブログで展覧会の開催前から制作過程や展示の様子を画像とレポートで紹介している美術系サイトが多数あります。それはドキュメントであり図録の目的すら軽々と代用し余あります。遠く離れた会場へ行かなくても何処からでも自由に見ることができます。また現地とはひと味違った角度で展覧会を擬似体験できます。美術ですから弾みがつくと実際には開催されていない展覧会でもバーチャルにネット上に出現しそうな勢いです。真贋の話ではなく現代におけるリアルという意味が加速し多義化しているのかもしれません。写真も加工や修整が簡単にできるようになるとネットを介してますます無限定化します。加工であってもそこに表現者の意図するリアルな感覚があるならば決まりきったひとつだけのルールに縛られるのではなく感じ受けとる側のセンスの数だけリアルもあるといえそうです。
 質感から敷衍してリアルというものをあらためて考えています。

陸奥新報「のれそれカッフェ」掲載)


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by aura-21 | 2010-02-14 15:08 | 作品画像


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