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AURA版画工房 日誌部 「むげたほげ」

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2007年 03月 04日

小説家と装丁

書店で雑誌「サライ」を購入。特集は「吉行淳之介」。
あまり本を読まない大学時代にその純文学の香りがいっぱいの吉行淳之介を読む切っ掛けとなったのは版画の担当であり装幀家であった前川 直教授でした。
前川さんは当時、ピークは越えたとはいえ相当数の本の装丁に関わっていた作家で、吉行淳之介の本にも多くの装丁、装画を手がけていました。私が版画室にいた当時に吉行の「夕暮れまで」が刊行されました。表紙の絵は前川さんでした。版画室に隣接する教授の部屋の机上にはいつも描きかけに置かれた作品がありました。いない間に盗み見たものです。そのひとつが印刷され本になることを不思議に感動しながら見ていました。
サライの特集では吉行淳之介の芸術の嗜好も紹介されていました。前川さんの絵について直接書かれてはいませんが、吉行が「クレー」を好きだったことは関係が深そうです。前川さんもクレーが好きでどうしても自分の絵がそれに似てきてしまうことを苦笑まじりに話されていたことを思い出します。
特集には現在書店で手に入る吉行淳之介の本が紹介され、「原色の街・驟雨」「砂の上の植物群」(いずれも新潮文庫)が掲載されていました。装丁は前川さんです。

前川先生も亡くなられて20年が過ぎようとしています。
自分にとっては現在も大きな師の1人です。

by aura-21 | 2007-03-04 12:56


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