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AURA版画工房 日誌部 「むげたほげ」

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2008年 01月 16日

近代版画の発展と青森

今日も冷える。起きだしても何もする気にならずテレビの前。
皇室の歌会始が映し出された。あの読み方ってなんだろう、不思議に聴き入る。でも画面に歌のテロップが流されないとなにをいっているのかは判らなかった。「声」や「発声」の持つ力は時に意味を凌駕するのだろうか。歌には人それぞれの人生の事情が詠み込まれていて、背景を聞くと確かに感動的だけれども、歌だけでは「普通」な感じしかしなくて、ちょっと物足りない。(不敬ですみません)



14時に風呂道具を持って県立美術館へ。別に県美に温泉があるわけではなく、県美の近くにある「三内温泉」にも入る魂胆。

県美では元日から4月13日まで常設展のみ開催中。その常設展で「近代版画の発展と青森」という企画が織り込まれている。(常設展示室の棟方と展示室 O、PQ、Mの部屋)

青森「創作版画誌」時代(展示室 O)
今の眼で一見すると小学校の図工時間に作った版画かとも見える葉書サイズの木版画集「緑樹夢」は本県の創作版画の黎明であり版画運動に大きな影響を与えた冊子という。1930年、青森中学の若者3名によって作られたその版画雑誌は創造的なもの・自分たちでも出来そうなものを欲していた後続の版画愛好者にも飛びつく道を魅せたのではないだろうか。現代では想像もつかないが、先陣の努力や先例のないことへの自力での挑戦には「若者」のすごさが何かを切り開くことだろう、、、と、時代に関係なく、いつも何か新しいことを起す若い力への羨望を感じる。(馬齢ばかりを重ねている自分、、)

銅版画と青森を結ぶ糸(展示室PQ)
今 純三、関野凖一郎と駒井哲郎、長谷川 潔、浜口陽三、浜田知明。
銅版画のみで構成したP,Qの二室。今に銅版画を学んだ関野が上京して起した「火葬町銅版画研究所」に駒井、浜田、浜口が訪れているという。描きたい世界は各人異なり深まっていく訳だが、とっかかりの版画技法や道具の工夫、調達には同じ作家として関心が深かったに違いない。関野は現在では木版画の作家と思われているが当時の銅版画には私も魅力を感じている。
個人的には大学時代に駒井哲郎の作品に出会ってから銅版画を始めたので、特別駒井作品には思い入れがある。しかし、この会場の作品三点は駒井の代表作もあるのだが、なんだかいまひとつ刷りの切れが悪い印象。浜田知明の作品の方が刷りの状態が断然によい。後発の美術館の悲哀か、、、

屏風仕立て(展示室M)
屏風にして見せている高木志朗、関野作品。
作家が自発的にこういう表装を選んだのだろうか、、、(根拠はないが)、コレクターによる「興」の流れで出来たようにも思える表装、、だとしても悪くない、、むしろ当時の日本家屋にマッチした展示方法だろう。
版画に限らず額に入った絵でもなんでも日本の家屋の構造には飾る上で無理があるように思う。最近の新しい建築はそうでもないが、昔の家屋では畳の生活が主で壁にかけた絵でも座って畳の上から見上げた状態に掲げられているのは何とも悲しい。額をかけることは椅子の生活であることが前提だ。だから軸や屏風は畳の生活に合うのだから版画も表装されることが生活に入れる条件かもしれない。勝手にパトロンの存在が頭をよぎった。

今井俊満の作品はその画面部分にだけ四角くスポットが当たっている展示。そこまでモノクロやすこし経年変化でくすんだ紙質のものばかりを見てきたせいか、展示室Kに入ったら途端に色の発色と飛び散るような筆さばきに鮮烈なものを感じる。なんかいいです。アンフォルメル運動も遠い昔のこと、でもなんか忘れ去られたエネルギーを蘇らせます。

展示室 Iの成田亨の怪獣デザイン
何度も見ているデザイン画だが、今回は展示室の構成で面白く見せていて、ちょっと「むふっ」っとしてしまう。そうかぁ、ノリちゃん、やったね!
あの天井の高い部屋を「ウルトラマン」「ウルトラQ」「ウルトラセブン」というデザイン文字の配置でやってくれています。横一列な羅列よりも括ってメリハリのある並び。額装ものの展示はむずかしいと思いますが、普通によかったんじゃないかな。
(それを思うと、展示室Qは貴重な版画作品の並列なので調光も落としてて、作品から離れるとただぼんやりとグレーや黒の諧調の判りにくい版画の額が並ぶことになって、版画だからしょうがないけど、残念な気がする。全部「のぞきケース」で見せたり? う〜ん、どうなんだろう)


三内温泉へ。硫黄の匂い。混んでいます。今日はちょっと湯の温度が低いかな。
雪はそんなに降っていないけど、道はツルツルに凍ってアイスバーン、車はノロノロ。ラッシュアワーの渋滞にも巻き込まれて帰り着いたら19時過ぎ。

by aura-21 | 2008-01-16 23:06 | ART


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